連絡帳

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「幸せがなんだかわからないまま幸せになれるのかな。」「(大きく口を開いて)し・わ・わ・せ?」「ううん。し・わ・あ・せ。…あれ?し・わ・わ・わ・わ・わわわ…なんだっけ?」「あの子絶対やったよね。」「それわたしも思ってたー!」「目尻かな?」「たぶん目尻切って涙袋入れた。」「てかあの子結婚したの知ってる?」「えーまじで誰と?」「〇〇」「うっそ!ウケる」「 最近どう?」「最近?別に。まあまあじゃん?」「だよね。」「結婚したいとか思う?」「そりゃあ幸せになりたいよ。」「俺は将来の夢がお嫁さんっていう子、好きだけどなぁ。」「付き合ってる理由もないけど特に別れる理由もないし。」「いつまで続けるんだろうね。」「あー石油王と結婚したい。」「すればいいんじゃない?」「なにを?浮気?」「そう。幸せになりたいもん。わたしたちは。」「さっきの居酒屋で男の子に声かけられてさ、どうやらその子はわたしのことを知ってるのよ。でもわたしは全く覚えてなくてぽかーんってしちゃったのね。その時の顔見てかわいそうになっちゃって急に思い出したふりしたんだけどやっぱり全然知らないんだよね。」「えーそれナンパじゃん?タチ悪いよ〜」「会社の飲み会って言ってた。」「めっちゃ見てるよ。」「                                 」「そうだね。」

とっくに飽きてる

撮ったり撮られたりしたフィルム写真 彼氏にだけ送る自撮り 溜まっていくLINE ミュートしてる友達 味のよくわからない日本酒 Huluは解約 Spotifyは学割プレミアム 撮っては消す夕陽 珈琲西武の待ち合わせ 検索履歴のデートスポット ポケットの中の折れた名刺 リクルートスーツの同級生 駅ビルで買った日傘 泥で汚れたピンヒール Diorのショッパー ペットボトルに生けた花 「キャスターマイルドボックスで」 「Wi-Fiある?」 割れてるディスプレイ プラスチックの大理石 snidelのオフショル Forever21の水着 7分半のゆで卵 天井の青空 フラッシュ焚いて撮った夜の花壇

めずらしく待ち合わせの15分前に着いたら桜ヶ丘カフェは貸切だった。仕方なく外に置いてあるソファに座ってヤギを見ていた。ピンクと白のヤギ。よくわからないけどmiumiuみたいだなと思った。その後綺麗なホテルのラウンジでたっけージンジャーエールを飲みながら初対面の人の犬の写真を見た。その日いちばんのかわいい声で「かわいー!」と言った。犬はかわいかったがわたしはたぶんかわいくなかった。充電が切れそうでコンビニ駆け込んだけど充電ケーブルが2500円もすることに驚いてやめた。本当に喫茶店のバイト2時間分の価値があるのかなと思った。居酒屋に入ったけど充電は切れてるしマイペースな女の子たちは待ち合わせ時間になっても誰も現れない。暇だし壁にかかったメニューを何度も読んだ。食べたいものはなかった。999円の金宮のボトルをみんなウーロン茶で割った。居酒屋で全員同じものを飲むことなんて滅多にないからなんだか嬉しかった。女たちは全員かわいかった。代官山は静かだね。あの曲がかかって、吸ってた煙草の火を途中で消してフロアに出た。外は明るくなっていた。少しだけ雨が降った。朝のタクシーで眠る。それはもう爆睡。洗濯物の、バスルームの、外の雨の湿気の中でも喉はカラカラ。鏡を見てる人を見てると自分がどこにいるのかわからなくなるね。(2017.5.12)

カビ臭いラブホテル。ホーリーマウンテンみたいなタイルの風呂場で永遠とお湯を流し続ける。生理的に出た涙を皮切りに、本物の涙が止まらなくなっちゃって少し驚いた。へんてこな場所にいると対照的に日常が際立ってなぜかいつもよりもいつもみたいになってしまう。何度もくる眠気の波をかき分けて音を消したテレビを見てる。滞空時間がやけに長い夜。(2016.11.26)

 

ビートルズが流れる渋谷のフレッシュネスで隙間風を避けながら時間を潰してる。バックれそうになったバイト先にごめんなさいの連絡を入れて踏みとどまった。なにか早く決めなくちゃいけない気がしてる。レモネードのカップの下にできた水たまりと湿気った煙草。ホットケーキみたいな爪の気泡。アクロスザユニバース。(2016.11.27)

 

19時新宿駅で泣く。寒い帰り道友だちの歌に泣く。消えかけた煙草に慌てて口をつける。ポケットの中で暇になった右手がだんだんと冷めていくのを淡々とながめる。久しぶりにさみしくなった財布の小銭を数えながらコンビニに入る。初めて遠い先のこともちょっとだけ考えてみたいなって思った。(2016.11.28)

 

泣き止むようにって買ってもらったあったかいミルクティーがどんどん冷めてく

夏の間に溶けた氷が目から溢れる。

夏は完全に冷めてしまった。大きなお家の窓がピカピカと点滅してる。家の大きなクリスマスツリーはきっとしばらく見てないうちに小さくなってるんだろうな。

ファミレスのパフェを食べた後の空虚感、あれがわかるかい?

自転車に乗ってどこか遠くへ。

 

たこわさとレモンチューハイは合わない。(2016.11.30)

 

乱視のせいで粒の多いイルミネーション。遠くから見た方が綺麗。ポケットの中に見つけた手袋ははめないで人のポケットに手を突っ込む。全然合わない食べものの趣味まで愛おしくて、どこまでだって行けそうな気がした。実際、自分がひとりで飛行機に乗って昨日の今日でこんな寒いところまで来てるなんて正直信じられない。もっと果てのない遠くに行ってみたい。なにをするでもなく、ただゲームセンターでコインゲームをした。すっからかんだった心がなみなみに足りてしまったよ。(2016.12.5)

 

二階のトイレのやる気のない電球が好き。北風にたてがみが揺れて、どこからか水の音が聞こえる夜は心地良いひとりの時間を感じられる。なんにもしない日に罪悪感もなければ焦燥感もない。大切な人に言わせちゃったチクチクした言葉を何度も思い出す。何度も思い出すうちにだんだん何も感じなくなってくる。(2016.12.6)

 

最近はなんでだかふとんの中で小さく丸まって寝てる。たぶんさむいからってだけじゃない気がする。ひとりぼっちの気分がちょうどいい。(2016.12.7)

 

Skype越しの子守唄。(2016.12.17)

気が向いた時に飲むビタミン剤みたいな関係・ただれた魚たち・ねっとりと流れる風呂場の時間・写し絵のような文章、それは

 

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日々過去を清算していくことこそが前を向いて生きるということだなと思いながら辛くて熱いカップ麺を食べた。めずらしく人と喧嘩なんかして部屋に置き去りにしたのと同じやつを一ヶ月経ってようやく。結局食べきれなくて一ヶ月前と同じくらいの量を残した。

 

どうやらコミカルに生きるしかないみたいだなと思った。悲劇は喜劇らしいし。淡々とした毎日の僅かな塵が積もって山になったら超ウケる。

下りの各駅停車の窓に満開の桜の輪郭を見てる。春の、この、油断すると寝過ごしてしまいそうなぬるい夜にあと何回会えるんだろう。春は切ないし夏も切ない。秋も冬も切ないって気づいたらほんの少し、また切なくなった。コートを脱いで汗を拭う頃になったらさ、冷たい水で顔を洗っていつも乗らない電車で遠くに行こうね。わたしは三日に一度、足の爪を塗り直すから。

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希望とか

舌に残る添加物の苦味と共に、花瓶に入れられたままドライフラワーになった花たちのことを考える。雨の日のバス停は傘の幅だけ列が伸びて、たまにしか出番のない長靴で少し強気になるけど座敷に通されるとなにかがマイナスになる。昨日まで青紫色をしていた大きな痣は目覚めてみると肌と同じ黄色になっていた。誰かの記憶に残るのが嫌で写真を嫌うあの子も、毎日のように自分の写真を撮り続けるあの子も、言ってしまえば同じ呪いに身を浸してる。間に入るなにかのおかげで/せいで好きになったり嫌いになったりするものはきっとそのなにかが好きだったり嫌いだったりするわけで、本物の好きと嫌いには理由もなにもない気がする。たぶんメールのはじめに「お疲れ様です。」なんて書くようになってから人とのコミュニケーションに疲れるようになってしまった。コーンの部分だけを残して途中で冷凍庫にしまっておいたソフトクリームを母親が食べきっていた。渋谷の東急ハンズって本当は何階建てなんだろうね。CMで夕陽を見る新垣結衣の頬の涙が本物だったとしたら、ほんのちょっとだけ明日の朝陽が明るくなると思うんだ。