2016年10月5日は水曜日
わたしの右に座った左利きの女の子の話に頷きながら薄く重なったミルクレープの枚数をフォークでなぞり数える。甘いものを食べたときの後悔に近い気持ちがゆっくりじっくりとのしかかってきてるのを感じつつも砂糖を二杯入れたロイヤルミルクティーで口をゆすぐ。
いつのまにかわたしたちはこんなところに来ちゃってて、プリクラを撮ることも、お酒を飲まない遊びも、明るい時間に外を歩くことも、なんだか気恥ずかしい。
「21歳だってさ」って、笑っちゃうけど別に笑うようなことでもないんじゃないかと思う。これからあと一週間くらい、わたしはなにをしてもしなくても死んだりしない限りはそうなるみたいだし。
大人になったらなんにも気づけなくなっちゃうような気がしてたけどそんなことなくて毎日いろんなことが起きたり起きたりしてる。
今日だって帰りのバスで前に座ったサラリーマンの肩でイモムシがうにゅうにゅしてたし、クレープは15枚だった。西洋思想史の先生の字はハチャメチャに汚いし、国分寺と新宿は果てしなく遠かった。決して大きくはないけど確実なズレの匂いがあたり一面に漂っていた。もう、それを無視することだってできた。
ところでそれって、なんにも怖くなくなっちゃったの?
なんにも怖くなくなっちゃったんだとしたらものすごく怖いなと思う。