そう
誰が見ていようと見てなかろうとわたしはわたしのことを書かなければいけない気がする。
どこからの視線がどうだとかそういうことはほとんど無視をしなければいけない。
理由なく泣くこともあるし、それが完璧にアルコールのせいだけではないことも実際のところある。
それを全て理解してほしいと言いはしないけども責めたりされる部分ではないと思っている。
一晩中泣き尽くした頭痛を知らない人もあれば、何事もなかったかのように朝に目の腫れをすっかりなくしてしまう人もいるし、そればかりは本当にどこからも、どこに対しても、誰からも、誰に対しても、攻めようがない。
仄暗い喫茶店で小さなカップに入った飲みなれないコーヒーを、ショットグラスのように飲み干した。夕陽はあっという間にどこか別の国へと行ってしまった。
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ものごとが滞りまくっていて、その中でもかろうじて人と関わる部分は、なんとかしなくちゃと動けるんだけど、肝心なところを放ったらかしにしているせいで、自分のやりたいことややらなくちゃいけないことがズンズンと、土に埋もれて手が届かなくなって、どうもない小さな嘘を撒き散らして、言いたいことを言うのもかったるくて、毎日寝て起きてもなんにもリセットされてなくて、わかってるのにってことばかりがのし掛かって、途中で考えるのを止めたものごとたちばかりが表情もなく、ジリジリと詰め寄ってきて、部屋の床の狭さと比例して、気持ちの空の青が減ってく。
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大きなピザがどんどんと冷めていく。
ゴムのように硬くなったモッツァレラチーズが重たそうに乗っかってなにも言わずにこちらをじっと見ている。
上座だとか奥の席がソファだとかそういうことは関係なくいつもわたしは入り口の見える席に座りたい。うまく当てはまる言葉がわからないけど、瞳の多動症とでも言おうかなにか常に動いてるものを見ていないと落ち着かない。それが氷が溶けるのでも、子供が走り回るのでも、誰かにキスされるのでも同じこと。壁をじっと見るのは耐えられないけど、ガラスは液体で常に動いてるんだよって教えてくれたでしょ。少しずついろんな呪縛が解けていってるような気もする。
そんなことないよって言うとき、本当にそんなことないんだけど、口ではそう言っていても耳に入ってくるそんなことないよって言葉はどこか嘘っぽく聞こえて、あれ?本当にそんなことないのかなって、そんなことなくなくなってくる。
どんなにやわらかくて大きくてあたたかい幸せをもらったって、この間もらったかたくて小さくてつめたい棘が残ってるから、そんな幸せも膨らまし粉で膨らんでるだけのスカスカな幸せに見えてしまう。
二階から花束
どうにかしてしまいたい。
気持ちの追い付かない涙を、沈んでいく破れた太陽を、寄り添ってもビクともしない悲しみを。
ふとんの中で聞く雨の音は生温くて、読書灯の煌々としたのを想いながら熱でちかちかする目をぎゅっと閉じる。
悲しみの共有はより一層悲しさを募らせることになるってなんとなく知っていたけど、いっときの安心にそそのかされてつい人の悲しさに自分の悲しさを重ねてしまう。
遠い人から投げられる大きな岩よりも、近くにいる人から手渡しでもらう小さな棘の方がずっと痛くて、ちいさなたくさんの棘でしぼんでしまった心に、待ってましたとばかりに冷たい風が吹き込んできた。
そうやって泣きながら寝た次の日はどこか空が重たくてわたしも何ミリか地面に沈む。
いつまでこうやって泣くの。
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金曜日の朝にカーテンの隙間から部屋に入る陽射しは、金色の、それはそれは暖かい色をしている。暖かいのは色だけで、ふとんの外側がしんしんと冷えているのを知っている。二度も。おかあさんが、蜘蛛を踏んだ。きのうみたく度を超えた夜ふかしをした次の日だけ早く起きられるへんてこな身体で、少し優雅に伸びをした。日々の統一感のなさ。全てがズレている。淡々と綺麗に並んでいるからこそ、ズレをおもしろいと思えるのかもしれない。抜け感しかないな。生牡蠣をずらっと並べて一気にレモンを絞って飲みたい。気に入ったものはしばらく食べつづける。目覚ましのアラーム、8時57分の次は9時3分。朝ごはんはここ最近食べてない。目玉焼きにはお醤油だよね。床を通して下のリビングから聞こえてくるくぐもったテレビの音を全身で受けとる。NASAの人!部屋に飾った紫のスイートピーの花言葉をこのあと調べるんだと思う。遠くの近くに雨の予報。
雪などが積もる前に
楽観的にものごとを捉えるしかやりようがない。
電子レンジの中で冷めていく麦茶の湯気を想う。
イルミネーションの粒を端から数える。乱視のせいで倍綺麗。
頬を刺すつめたい風に立ち向かう勇気もなくて、ね。
おわりよければすべてよし。おわりがどこだかわかんない。
ぐっすり眠れ。
大きな飴玉がトラウマでなにが悪いの。
天橋立で逆立ち。
もうしばらく造花しか見てない気がする。
わたしが参加しなかったキャンプファイヤーのことを思い出す。
床暖房にべったりくっついて、少し経ったら裏返す。
どこまでも引ける弓。
キラキラのペンで書いた交換ノートは全部わたしが止めてる。まだ。
昼の蝶々。夜の蛾たち。
イミテーションのイミテーションはイミテーション?
いつもいつも自分のひとくちを見誤るひと。
かすかに聞こえる冬の足音。わたし、耳がいいから来年のだと思う。
チェックのほつれを見つけるとうれしい。