虹の入江で
線路の砂利の隙間に咲いた白い小さな花が通る電車の風に吹かれてそよそよと涼しげに揺れている。陽を遮る屋根もないそこですくすくと育ち、大きくなったところでさっきまで優しく風を吹かせていた電車に轢かれて潰れてしまう。
強く生きること。したたかに、たおやかに、清く、正しく生きることがそんなに難しいんですか。
好きな人を好きという気持ちだけで全てがうまくいったらいいのにといつも思う。大事なものを大事にしたい。泣くことも怖くないのになにがわたしをこんなにいたたまれなくさせているんだろう。早く春が来ればいいのに。
気持ちに蓋をする必要のない日常がスパッとなくなって一気に吹き込んできた汚い煙に目をやられてぼろぼろと泣く。いままでよりも太ったわたしはいつものところに指輪が収まらなくて薬指を光らせている。帰り道の雪はすぐに止んじゃって積もったり、地面を光らせることすらない。ここはやっぱり東京。