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am1:43 梅酒ミルク

無色透明のグラスに氷を入れる。もともと金の薔薇の絵が入っていたグラス。花びらの多い金の薔薇の絵は何度か食洗機に放り込まれたのちに綺麗さっぱりいなくなってしまった。

冷蔵庫を開けて取り出した梅酒を、グラスの三分の一まで注ぐ。次にまだ開いてない牛乳のパックを少し手こずりながら開ける。並々に注いだところで冷蔵庫の開けっぱなしの合図が鳴り、小さく舌打ちをする。せいぜい20秒くらいだろうに人間をそんなに急かすんじゃないよ。こっちにも都合ってものがあるんだよ全く。

そうして冷蔵庫のお望み通りに扉を閉め、食洗機の中にあった箸で慎重にかき混ぜる。作りたてで飲まないとどんどん分離してヨーグルトの出来損ないみたいになってきちゃう。はい。梅酒ミルクだよ。

遠くて近い

やっぱり現実味がない生活が気持ち悪くも心地よくて、毎日お酒を飲んでも飲まなくても曖昧に夜を明かして、これが二十歳のわたしの記憶になるなら誰よりも鮮明に覚えていたいと思える。蝉は全部死んで秋の虫が鳴いてて、もうひと月したらひとつ歳をとってまたすぐに今年が終わる。前の年と比べてみても今がいちばんたのしいと思えるし、幸せかと聞かれたらそんなんは知ったこっちゃないけど、確実に今しかできないことたちを重ねていっているからなにひとつとして後悔することはない。なげやりになるわけでもなく、でもなにかにしがみついたりもしないし、誰かのなにかになったりならなかったりしてもわたしはわたしのいちばん大切なひと。いつもそれだけを忘れないで好きなように生きててね。

ハイボールの夜

0時すぎ、駅前のチェーンの居酒屋、まずいハイボールとしょっぱいポテサラ、やけに天井の高い店内はけっこう賑わってて、だけどなんでか会話はひとつも耳に入ってこない。2020年のことを想像してわたしはなんにも言葉が出てこなくなってた。4年経ったら25歳かぁ。そのときも一緒にいれたらいいな、なんて思ってみたけど口には出さなかった。明日なにを考えてるかだってわからないのに無責任な言葉を放り投げるのは気がひけた。冷めて固くなった焼きおにぎりを箸でつっつきながら急にやり場のない孤独感にさいなまれて怖くなって顔を上げた。大丈夫だよ。ちゃんとテーブルの下では脚を絡めている。ズームボタンを押しながら後ずさりするような、視界が一瞬グラついたのはお酒のせいなんかじゃない。氷もとけて、ジョッキの汗がiPhoneを濡らす。次に目があったら、きみが、なにを、言う、か、当てる、よ、、ん、ほら、やっぱり、ね、当たり、だ、口元に、目を、やる、そ、ろ、そ、ろ、か、え、ろ、っ、か、、、、うん。

ほんのちいさなきっかけだとしても、わたしは大事に大事に水をやり屋根を与え愛をかけて立派なかなしみに育てあげてしまう。

些細なことほど気になるもので、ゆるやかだけど、確かに淡々と、着々と、積もっていくさらさらの砂たちは両手ですくい上げても指の隙間からこぼれ落ちるのです。

 

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星の見える夜も、見えない夜も、手を繋いで、どこまでも、どこまでも、月の明かりに、照らしだされた、その横顔を、こっそり見上げて、なんにも言わず、履きなれた靴で、地面を踏みしめて、朝から逃げるように、しっかりと、歩いていくよ。

 

二十歳の夏

東京は夜の7時。ラジオの向こうでは渋谷PARCOのおしまいを惜しんでて、わたしはくるくると変わる空の色を全部覚えていたくて、今もしも手を繋いでいたならぎゅっと力を込めていた。そんな夜だよ。

視線も声も仕草もなにも全てがラブレターで、人を好きってだけでこんなにも嬉しくて、ってJ-POPの歌詞みたいなこと言っちゃうくらいに大切な夏。

難しい言葉はいらないし、おしゃれなお店じゃなくてもいいし、なにをしてもしなくても、思い出よりも綺麗な空。

カレンダーを見ても今どこにいるのかパッとわからなくて、というか7月というところに驚いてしまって少し笑ってしまう。

7月中に宿題が終わったことなんか一度もないくせにそれができるってまだ信じてる。

夏なんてあっという間に終わっちゃうって言ってる間に終わる気がする

今のは短歌です。

人を安心させるよりも自分が安心したい。

気づきたくなかったことに気づいちゃったけど本当は気づいていたような気もしていて少し気が楽になった。

 (7.22)

 

人づてに聞く、前に仲良かった子の噂。

あの子の誕生日。あの人の誕生日。

昔好きだった人にばったり会って、わたしから話しかけて、好きな人からの着信中の画面にごめんねちょっとだけ許してって思ってた終電。

7センチのヒールにも慣れてどこにでもいけそうな気がしてた。もう電車ないのに。

(7.23)

 

大きな夢を見た朝に

 

長くなりすぎた爪で返すLINEの返事は誤字だらけで、言いたいことはちっとも伝わらない。

友だちのつくったプレイリストでひとの気持ちに寄り添った気になってわたしは泣いたりする。泣いているのはわたし。そこに友だちの感情は1ミリも含まれてないのに。

季節のせいか感傷的になることが減ってきていてどこかさみしい気もしています。存在していることにたいしてのエモさ(この言葉はあまり好まないけどあえてここではそう言います)のようなものがじんわりと溢れていたいと常日頃思っているので、ギャルに憧れたこともありましたがそんなことはもうどうでもいいのだ〜〜〜〜〜〜〜なるんであればアフリカのギャルくらいふりきらないと意味がない。

わたしはなんにもかわらないよ。