連絡帳

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散り散りに

      光る猫を追いかけて

                                                                      どこまでも

                                     どこまでも

     ユートピア

               いつだって

                                    すり減ったローファーの底の

音に

                                                  耳を澄ませ

                  確かに思う

                                                                   キスの合間に

朝の光の

     はためくカーテンが

                                                           微かに色づき

夢に忘れた

                               時計の針を

ひとつ

                                                        ひとつ

   拾い集めて

            伸びた袖口を

                                                                         通り抜け

濡れたアスファルト

                                       キラキラと

         ひるがえす

                                          たった今

                                                                      黒い光に

 包まれた

                                                                ほんの一瞬

                      大きな愛が

目に見えた

                           そんな気もした

                                                                午前9時

 

 

0:38

ゆるゆると背骨の真ん中が動くような、気味の悪くも心地良い浮遊感に埋もれて、ふかふかの毛布の中で微かに汗ばむ足の裏を、外みたいに冷えた白い壁にくっつけて、高い部屋のベランダから見た朝焼けの、宇宙が透けて見えてるみたいな空の色を思い出して、冷たい風が運んでくる遠くの電車の音に耳を傾ける。すぐに神様を探したがる。…湿った土にずぶずぶと指を突っ込む。よぉく見てごらん。魚が集まってきているのがわかるかい?

買ったばかりの花を捨てる

透き通った深い紺色の夜の隣、窓越しに遠慮ない雨音が聞こえる。ツンと冷える鼻の奥にはいつのまにかすっぽりと11月がはまっているみたい。なんだか居心地の悪いままに日めくりのカレンダーは薄っぺらくなって、少しだけ着飾った殻の中でわたしの中身がカラカラと音を立てて自己主張をする。淡々と、近しい人たちから与えられた”そういう”言葉たちを等間隔に並べていく。手は小さく震えて無表情で涙だけがポツポツと正座のひざの上に重なっていく。匂いつきのトイレットペーパーで鼻をかんだ。きっとそれが今の全て。

ミスiD2017文芸賞をいただいて

長い長いミスiD2017が終わり、ほっとしています。

Twitterでありがとうと言ってちゃっちゃと終わりにするつもりでしたが、せっかく文芸賞とかいうかっこいい賞をいただいたので少しミスiDの話をしようと思います。

始まりはまだ肌寒い4月。もはや恒例となったミスiDの応募受付開始のツイートがRTに乗ってやってくる。今までは特になにも考えず流し見していたそれをなぜだか今年は開いてしまった。名前や誕生日、身長、趣味、特技、らへんまでは迷いなく打ち込んだが自分のスリーサイズがわからずに放置したまま気がつくと5月に。締め切りは確か5月10日だったかな?たぶんいつもならそのまま忘れて終わってたけどなんでだったかねハッと思い出し、裁縫道具の青いカンカンから引っ張り出したメジャーでスリーサイズをはかった。
友人のカメラマンけんちに無理を言って応募用に写真を撮ってもらった。
心の準備をした。いやしてないような気もする。
締め切りギリギリまでかかってたった4行の自己PR文を書いた。
ためらいなく応募ボタンを押した。
SNSでは言わなかった。牛乳寒天なつみんの応募しましたツイートを横目に見ながらいつも通り飯を食ったり酒を飲んだり相棒を見たり踊ったり本を読んだりデートをしたり卓球をしたり歌を歌ったりしていた。
そんな間に「一次とおったよー!」のメールが届き、講談社に呼ばれた。
馬鹿でかい建物の中で迷子になりながら同じく二次審査に向かう女の子と端っこの端っこのスタジオに辿りついき、わけもわからないまま熱気かはたまた空調が馬鹿なのか蒸し暑い部屋の中カメラを回され気がついたら遊びに来ていた堀越千史と帰りの電車に乗っていた。
くねくねとした長い廊下を一緒に歩いた女の子は発表されたセミファイナル一覧にはいなかった。そこで違うことといえばわたしは途中の自販機で水を買った。それだけ。暑かったもんね。
夏の最中の阿佐ヶ谷のイベントではぎゅうぎゅう詰めの控え室に奴隷船を連想させられて磯丸水産に逃げ込んだ。結構ベロベロだった。白瀬百草はベロベロベロくらいだった。正直誰もが疲れるだけのツラいイベントだったけど私物プレゼントで恋空にサインしたのは本当にいい思い出になった。一生ない経験だと思う。ありがとう。
初めからなんの根拠もなくセミファイナル止まりな気がしていたからファイナリストに残ったってわかった時はえっとなんだっけ、全然覚えてないや。とにかくちょっと驚いた。それから髪を切った。すごく痛んでいたから。
@JAMのことはあんまり記憶に残しておく必要もないかなという感じ。すごく疲れた。楽屋にいる時間が一番疲れた。
そんでもってようやく最終面接。今度は講談社の中でも迷わなかったし空調もちょうどよかった。心なしか面接を待つ女の子たちもリラックスして見えた。控え室が広かったからかな。天井も高かったな。窓の外の綺麗なピンク色の夕焼けが完全に落ちきるまでを眺めていた。でもね、くる場所を間違えたような気がした。今日だってそうだった。楽屋の女の子たちの一挙一動をどこか遠くからこっそりしっかりジッと見ていた。真正面を向いて武器なのか何なのかわからないものを一生懸命振り回す彼女たちに対して申し訳ない気持ちになっていた。今までの楽屋での居心地の悪さの正体は確実にソレだったみたい。「わたし自身は表に出なくてもいいんです」とか平然と言いながらもちゃっかりヘラヘラとファイナリストなんかやってる自分が恥ずかしくなってた。
帰りたくて仕方なかったけどこれで帰ってもいい気持ちでミスiD終われないなって思ってグッとこらえた。嘘。寝てごまかしてた。
そしたら名前を呼ばれて、「ブンゲイショウです。」って言われて、「ブンゲイショウですか。」って言って、「文芸賞です。」って言われて全部理解した。
講談社主催ミスiD2017文芸賞受賞』
なんていい響きなんだろう。なんて素晴らしいバランスなんだろう。
だってわかる?”文学”じゃなくて”文芸”賞。なんだかよぉく噛んで飲み込みたい賞だ。
わたしにとってグランプリを取るよりも意味がある気がする。
言い訳をしないでわたしだって真正面から勝負したい。
勘違いをしたまま最後まで来てたみたいだけど、ミスiDは単なるアイドルオーディションじゃなくって、サブカルオーディションでもなくて、なんかもっとすごいかなりめっちゃだいぶやばいオーディションだから各々の真正面がてんでバラバラでも許してくれる。
全部が終わって、この賞をもらえたからこそ気づけたこと。自分の中で大きなきっかけになると思う。
嬉しいからもう一回言っちゃう。
講談社主催ミスiD2017文芸賞受賞』
これからも宜しくお願いします。ありがとうございました。

 

2016.10.30 中村ちひろ

 

 

よのつねよ

頭をぶつけろ 弓を引け ガラスの向こうに 手を振るな 夜の帳を ぶっ壊せ 手綱は切って ひっぱたけ とどのつまりを 追いかけろ 年を重ねて 陽が落ちる 雄弁なのは 君にだけ のぞいてごらん 日々の穴 よくきた坊主 舵を取れ よろしくどうぞ この度は 度が過ぎてるぞ 恥を知れ 石油の匂いの 万華鏡 魚の鱗 口につけ よく見ろあれが 遊覧船 泣く子を叩く 腹に決め きてみりゃどうだ 真骨頂 そばがら枕の その下に 想いの丈を 綴ってる 芯の強さが 仇となり 他人のものが 目に入る 笹の葉さらさら 手にとって 角を曲がると 女子高生 武器を捨てるな 武器となれ 間髪入れずに 火をくべろ 余暇の長さが ものを言う 血のないとこに 人はいない グラス傾け飲み干せば よく知る顔が 目に入る 相槌かまして 目が覚めた 秋の夜長の 夢と知る

かなしみが

明確な理由のない漠然としたかなしみの大きな大きな口の中は真っ暗で声を出したら小さく細く長く響きそうで、講談社の講堂で昼が落ちるのをぼんやり眺めていたときの落ち着かないことに落ち着いている自分をはるかかなた上の上の方の深い深い穴の奥の奥からじっと見つめているような、ぽっかりとした無がたくさんポツポツとそこらに散らばって夜であったりなにかそれの途中の時を行ったり来たり、どうやら右や左の目のふちをすれすれにする海が誰か昔の知り合いの口癖を乗せてどんぶらこどんぶらこと文字たちがお辞儀をするように、咲きっぱなしの蓮の花をひまなときになぞってうっとりしたり。

黄身を箸先でぷつんと切る瞬間、傷口に血がふつふつと集まってくるまでの白い時間、鍋のお湯が小さく沸騰するなだらかな音、ホットミルクが膜を張り出す温度、そういう大切なことにもっともっと気づいていかないとわたしはだめになる。 ベランダの隅で死んでた蝉もカラカラになってどこかいなくなってしまった。あっという間にわたしの20歳は過ぎ去ってなんの変わりもないままに21歳の日常が流れはじめた。駄々をこねて泣きながら吉祥寺の駅で迎えた誕生日は詩的なものでもなんでもなくて、いつもと違ったのはひとりで持ちきれないほどの愛にまみれたお酒を抱えてたというところだけ。わたしはとっても幸せだよ。